FIVは、CD4陽性細胞(免疫の司令塔)が(病原体を排除するために)活性化する際に発現する分子CD134と結合し、CD4陽性リンパ球を破壊しエイズを引き起こします。これは人のエイズ(HIV)と似た症状を引き起こす病気です。
猫エイズも人のエイズと同じようにいくつかのステージがあり、病気は一定の順序に従って進んでいきます。
猫エイズの概要とステージ一覧は下記の記事にありますが、ここでは猫エイズに感染してからたどるステージごとにどんな症状が出るのか書いていきます。
急性期
発熱やリンパ節の腫れがみられますが気づかないほどの軽い場合が多く、見過ごしてしまうことが多い時期です。
猫によってはほとんど症状がみられない場合もあります。
しかし若い猫の場合、肺炎や急性腸炎などによって死亡する場合もありますので注意が必要です。
最近の動物病院では原因不明の発熱があればすぐに検査してくれますので、いつもと違う異変を感じたら動物病院を必ず受診してください。
無症状キャリア期
すべての症状がなくなる時期が無症状キャリア期です。
この時期に検査をすると抗体が陽性を示し、明らかに感染している状態です。
しかし見かけ上はまったく健康なときと変わらず区別がつきません。
この時期は1年から4年ないし、長い時には10年にもなる場合があり、発病しないまま生涯を終える猫も多くいます。
感染がわかったらこの時期を長くするために環境を整えストレスのかからない状態にしたいものです。
なおこの時期でもウイルスを保有しているため他の猫に感染させる力があります。
他の猫と接触しないように飼い主としては十分な注意を払いましょう。
PGL期
無症状キャリア期から発病に至る兆候として、全身のリンパ節の腫れが見られるようになってきます。
この時期を持続性全身性リンパ節症(PGL:Persistent Generalized Lympadenopathy)期、PGL期と呼ばれます。
感染した直後のようにリンパ節が腫れはじめてきて分かるのですが、猫を毎日触っていたとしてもリンパ節を意識して触っていないとわからりません。
この時期はおよそ2か月から4か月で次の状態へと変わっていきます。
ARC期
エイズ関連症候群(ARC:AIDS-related complex)期、ARC期と呼ばれる時期です。
この時期になるとリンパ節の腫れに加えて、口内炎、鼻炎、結膜炎、皮膚炎、下痢、発熱、体重の減少などが見られます。
このような状態を繰り返しながら少しずつ慢性化していき、軽い症状のまま経過していく猫もいれば、徐々に重度の症状を示すようになる猫もいます。
そのようにはっきりとした症状を示すようになった猫をエイズ期と判断します。
エイズ期
この時期になるとひどくやせ細り、貧血、白血球の減少、弱い細菌にも感染する日和見感染、悪性腫瘍などが見られます。
ここではさまざまな病原体に対して守るための機能が働かくなる状態、つまり免疫不全の状態になり普段はおこらないような感染症や悪性腫瘍が起こります。
すでにリンパ節の腫れはひき、むしろ萎縮していきます。
そして多くの猫は数か月のうちに命を落とします。
どんな猫も私たち人間より寿命は短く、原因の差はあれ先に亡くなります。
感染症や事故やその他の病気など、理由は様々です。
FIVに感染しているとわかると、この先に死ぬ運命があって暗い未来しか待っていないように思うかもしれませんが、どんな生き物も死に向かって進んでいることに変わりありません。
それが「生きる」ことです。
どんな猫にも、猫だけに限らずどんな生き物に対しても愛情を持って接していきましょう。
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